お酒について

みなさん、お酒はお好きですか?

日本人は飲酒に寛容な民族と言われてきましたが、昨今では一気飲みによる急性アルコール中毒の多発、飲酒運転での悲惨な死亡事故などを受けて、人々が飲酒に向ける目は昔とは変わってきたようです。

精神医療の世界でもアルコール問題は大きなテーマですが、今日はお酒の治療への影響についてお話ししたいと思います。

①飲酒はうつ病を悪化させる

 うつ病治療中の方、お酒はうつ病そのものを悪化させ、治りにくくします。

 アルコールは抗うつ剤の効き目を打ち消すという研究結果もあります。

 また多量に飲酒する方は食事を摂らなかったり、偏ったり、アルコール代謝でビタミンを浪費します。そもそも多量の飲酒がうつ病様症状を引き起こしていることが多々あります。

 うつ病症状で入院した方が、お酒をやめただけで、症状がキレイに治るケースも珍しくありません。

 

②飲酒はパニック発作を起こりやすくする

 パニック障害という病気があります。不安そのものや不安が動悸や息苦しさという身体症状に姿を変えて、発作的に起こる病気です。あまりの苦しさと恐怖に死ぬのではないかと感じるほどの発作だと言います。

 アルコールは緊張をほぐし、不安感も和らげるように感じます。しかし、このパニック障害、また不安そのものも、残念ながら飲酒でスイッチが入りやすくなり、悪化するのです。

 

③アルコールは認知症のリスクを高める

 アルコールそのものの害、から酒(つまみを食べずに酒だけを飲む)による栄養障害などから、物忘れが起こりやすくなります。アルコール依存症患者の多くで脳の萎縮が起こることは知られています。断酒によって状態が改善することもあります。また、間接的に高血圧や動脈硬化による脳血管障害などがおこりやすくなるため、脳血管性障害による認知症の危険も高まります。

 

④アルコール問題は自殺のリスクを高める

 日本の自殺をした人の21%にアルコール問題が認められるという事実があります。海外ではアルコール依存は自殺リスクを60~120倍に高めるという報告もあります。考えてみれば、アルコール依存は不眠やうつ病だけでなく、結果として離婚、失業、体の病気、逮捕を引き起こします。さらに、酔っ払った状態は「飲んだ勢い」という衝動の高まり、周りが見えなくなるという恐ろしさがあります。

 

⑤適正な飲酒とは

 厚生労働省は適正飲酒として、1日純アルコール換算で20g(ビール500cc、日本酒180cc25度の焼酎110cc、ワイン180cc)と推奨しています。しかしながら、最近の英国の研究ではそうした適正飲酒であっても脳の海馬(記憶を司る中枢)は萎縮してゆくリスクがあると発表しました。つまり、少量でも飲酒習慣があれば、認知障害のリスクはあると言えます。

 

 

残念なことに、健康にいい飲酒というのはあり得ないというのが現実です。

現在、アルコールの飲み方の危険度を調べるテストAUDITが汎用されています。以下のリンクからご自身もチェックしてみてください。

 

https://gen-shu.jp/risks-associated-with-alcohol/audit/

なお結果の正しい評価には、専門家の判断が必要です。

アルコール依存症治療は専門の治療病院がありますが、当院でもご相談にのります。