子どもの自傷について

最近の報告では「リスカ」といわれるリストカットといわれる自傷は中高生の約1割に経験があるといわれています。

これは自傷と自殺とは性質が違いますが、自殺予防の観点から慎重にあつかうべきものであると,国立精神神経医療研究センターの松本俊彦先生は以下のように強調しています。

 

よくこういう行為を「誰かの気を惹くため、関心を引くための人騒がせな行為。アピール的な行動」と見る向きもあります。しかし,ある調査によるこの行為は人目に触れないところで行われていて、大人が気付いているのはごく一部だといいます。つまりアピール的な自傷はまれなものなのです。自傷行為は,身体に痛みを加える事で心の痛みを鎮める、孤独な対処法である事が多いようです。

 

 

自傷という対処法は当事者にとって、簡便で即効性がありますが、それを続けていいはずはありません。こうした自傷には2つの大きな問題があります。

 

 

①自傷で心の痛みを和らげたとしても一時しのぎに過ぎず、本当の問題や悩みへの建設的な解決が後回しになり、かえって深刻化する恐れがあること。

 

②自傷行為は繰り返されるうちに、麻薬のように耐性がつきやすい。落ち着こうとして前よりもエスカレートしやすい。「切っても辛いが、切らなきゃなお辛い」という事態に陥りやすい。

 

 

つまり,自傷しても問題は解決せずに事態は過酷になってゆき、自傷もエスカレートして徐々に「いなくなりたい」という考えに至る危険をはらんでいるのです。つまり,自傷行為とは、今日をどうにか生き延びる為に繰り返されながら、逆に出口のない袋小路に追いつめられるものなのです。

 

こうした自傷行為をしている子供たちを、周りの大人はどう援助したらいいのでしょう。

①まず気付いてあげること。そこで叱ったり、「自分を大切に」と正論を伝えるたり、「二度としない約束」をする事は役に立たない。本人が傷を見せてくれたら、「よく打ち明けてくれたね」とねぎらい、何があったか、どうして自傷をしたくなるのか話を聞いて向き合ってあげよう。

 

②専門家に相談する事を手伝おう。スクールカウンセラー、病院、クリニックなどへいってみるかと専門家へつないであげよう。相談した先が今ひとつのときは、「じゃあ別のところへ行ってみるか」とつなぎ直しをしてゆく。

 

③親やパートナー等は本人たちにとって一番大切なもの。しかし家族やパートナーは自傷が繰り返されると、疲れてきたり、いらいらしたりするものである。家族も抱え込まず、専門家や相談機関など多くの人に関わってもらおう。

 

④他の子供に知らせないこと。自傷行為は、同じような苦しさを抱えた子供には驚くほど簡単に伝染する。本人には長袖シャツを着ることを提案していこう。

 

何より自傷を見たときに「よからぬことをしている」ではなく、「なにかあったのではないか」と気にかけて,向き合うことが子供の救いになるのではないでしょうか。

 

※写真は雪の日のクリニックの屋上庭園

Image-1