子供でも生きる力を 3

前回コラム「子供に生きる力を」 「子供に生きる力を2」

前回コラムに「食べること」を人一倍大切に考えていると書きました。

そのためデイケアでは屋上で作った土の匂いのする野菜を収穫から料理まで子供たちに体験させたいのです。コンビに弁当やカップラーメンだけを食べていたら本来の野菜の味などもわからないし、食材を作ってくれた人への感謝も生まれないことでしょう。

当初は屋上で収穫されたトマトやキュウリが」サラダにのっても、子供たちの中には「なんだか気持ち悪い」という子もいました。仕方ないと思いました。それでも屋上でとれたものを調理に出し続けました。

新クリニックになって1年ほどたった2011年春。スナップエンドウがたわわに実り、収穫しました。私もその日は診察の間にたまたま時間があり、子供たちにつきあいました。子供たちは収穫したスナップエンドウを湯がいて、いただきますを言うと、先を争うように食べ始めました。みんな「おいしい!おいしい!」と笑顔でした。

それまでクリニックの運営であれこれ頭を痛めてきた私でしたが、その苦労に意味が吹き込まれた思いがしました。

新クリニックでの1年半、なんとか進んでくることができたのも、私の思いを理解してくれる優秀なスタッフたち――臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士、看護師、事務――の力、そして院外の多くの方々のご協力の賜物にほかなりません。これからも一歩一歩、スタッフ一同子供たちとともに育ち、日々の取り組みを地道に続けてゆこうという思いでおります。

 

※ここで紹介した事例については、文意を損なわない配慮をしつつ、個人情報保護の視点から本人を特定できないように詳細を改変しています。