「心の強さ」ーレジリアンス

「あの人は強い」、「彼女は弱い人だ」など、たびたび私たちは人としての強さ弱さを話題にすることがあります。こうした場合は、押しが強いかどうか、打たれ強いかどうか、忍耐強いかどうか、など多彩な人間の側面を漠然と言っているに過ぎません。また押しの弱い,控えめな人が頑固で自分が一度決めたことは押し通す側面があったり,人間というのはいろいろな面があるため,一概に強さ弱さを論じるのは難しいものです。

さて、精神医学における「心の強さ」とはなんでしょう?「心」自体が実態がありませんから、これもいろいろな面から強さが論じられてきました。以前は,病気になりやすさ、ストレスに対してどう反応するのかなどなど、主に病気の側から見た強さ弱さばかり目がいっていたきらいがあります。
近年では「レジリアンス」という考え方が広く浸透しています。これは、わかりやすく言うと「外からのネガティブな影響で起こったゆがみを跳ね返す力」と言われます。言葉を変えれば「嫌なことが起こっても、そのまま折れないで立ち直る力」とでもいいましょうか。

このレジリアンスを高くする要素は多種多様論じられています。例えば、「いい人間関係」,「自分を大事に思う気持ち」、「自分をポジティブに見てくれる人がいる」、「新しいことに好奇心を持って向かってゆく」、「自分を責めすぎない」、「嫌なことを忘れる力」などがレジリアンスを少しづつ高めるのだと言われています。

とはいえ、病気をしたりすれば長い間に,レジリアンスは徐々に低くなり、傷つきやすくなったり、悲観的になりがちです。こうなってくると、薬だけをあれこれ変えてもすぐに楽になるものではありません。私たちはそうした状態を元に戻りやすく,跳ね返していけるような力を身につけるには、やはり対人関係・社会参加が重要だと考えます。そのため、当クリニックのデイケアでは集団に慣れるためのプログラム、作業をするプログラムなどを用意しています。人と関わること、何かを作ること、参加すること,共に成し遂げることなどを通して,人は強くなれるのだと私たちは考えます。

※ 写真はマンガ「きょうの猫村さん」に興味を示す院長の愛猫・金時